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音楽の散歩道
音楽溢れるフランス映画
2009年4月25日

おがわ・ひろこ

小川弘子

神戸大学教育学部音楽科卒。同
大学院修士課程修了。専門はピ
アノ。歌曲、オペラアリアなど
声楽の伴奏を得意とする。97年
に渡米し教会、コミュニティー
団体などで伴奏している。

 1936年、パリ。第2次世界大戦前で、きな
臭い空気が流れ始めているものの、まだ一般市民
の生活にはのんびりとした雰囲気があった頃。舞
台は、街外れの小さな広場にあるミュージックホ
ール、"Chansonnier"(シャンソニエ)。 「Paris 
36」は、その劇場を中心に展開する、歌あり、踊
りあり、愛あり、笑いあり、涙あり、というフラ
ンス映画です。

 2004年に公開され、フランス国内では87
0万人、実に7人に1人が見たという観客動員記
録を樹立し、翌年のアカデミー賞外国語映画賞に
もノミネートされた名作「コーラス」の監督と主
演俳優が再びタッグを組んだ「Paris 36」は、クリ
ストフ・バラティエ監督の信念でもある、厳しい
現実の中にも必ず希望はあるということ、音楽が
いかに人の心をいやすかということを描いていま
す。

 経済的理由から閉鎖されてしまったわれらがミ
ュージックホールを、何とか再開させたい、あの
ミュージックホールそのものが自分たちの人生な
んだ、と命がけで無謀とも思える困難に立ち向か

う 3人の男たちと、そこに現れる不思議な雰囲気をもつ若い女性歌手が、
不器用に回り道をしながらも奮闘する姿は、時代やお国柄、文化の壁を超
えて、誰にでも共感を与えるものです。

 その4人の主演俳優たちが、とてもよいのです。劇場閉鎖で職を失った
ことによって最愛の息子の親権も奪われてしまった演出家、いまひとつ冴
えないヴォードヴィリアン、自分の生き方に迷って女性の後ばかり追いか
けている照明係。この3人ともがフランスでは有名な俳優で、各々映画や
テレビ、舞台で活躍しています。「コーラス」で主役の音楽教師を演じた
ジェラール・ジュニューが、一度はやけっぱちになりながらも、立ち直っ
て自信を取り戻していく演出家役を演じています。そして、この映画の華
というべき存在の新人歌手デュースを演じたノラ・アルネゼデールは、数
百人に上る参加者のあったオーディションで選ばれた逸材です。彼女自身
がまだまだ新人であることから、その初々しさ、少しおどおどした感じ、
歌も演技も上手だけれど映画の中で次第に上達していく様、そしてもちろ
んその美しさなどが、この役にぴったりだったと監督が絶賛しています。

 この映画のもうひとつのテーマとして画面でもBGMでも多用されてい
るアコーディオンの音が、パリの雰囲気を一層引き立てています。19世紀
にイタリアからフランスに持ち込まれたこの楽器は、現在に至るまで、カ
フェやストリート、ミュージックホールなどの大衆音楽の場面で大いに活
躍し、この映画では、親子の絆の象徴として最初から最後まで重要な役割
を果しています。

 ハリウッド映画の超大作のような大音響、思わず目をふさぎたくなるよ
うな暴力的な場面はほとんどなく、大人も子供も同時に楽しめ、なんと言
っても音楽満載の映画です。あまり上映館は多くありませんので、新聞や
インターネットで劇場や上映時間を確認してからお出かけ下さい。

 

 

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