能公演:日米劇場で20年ぶり
「敦盛」演じ700人を魅了
2009年2月28日

20年ぶりに日米劇場で公演された能楽の舞台
日本伝統の「能」を伝えるため京都から来米したシテ(主役)の味方玄
(みかた・しずか)氏ら5人の能楽師が米国ツアー最初の公演地ロサンゼ
ルスを訪れ6日夜、日米劇場で約年ぶりとなる舞台に立ち演目の「敦盛」
を披露した。公演は国際交流基金ロサンゼルス事務局と日米文化会館の共
催。
出演者は、欧州、アジア各国を回り数々の国際舞台を経験する30代と
40代前半の期待の若手5人。公演は「能面の奥の幽玄」と題し、観世流
能役者・味方氏がレクチャーを先に開き、会場をいっぱいに埋めた約70
0人の観客が理解を深めたところで舞台に入った。
レクチャーでは、能の歴史や能面、舞台、役者の所作、囃子方は大小の
太鼓の特徴や作りなどを紹介し、太鼓の叩き方の実演も行った。舞台で使
う艶やかな装束も披露した。
能の起源は神社での祭礼として、役者が面をつけて神の言葉を伝え、天
下泰平、五穀豊穣、国土安穏を祈る儀式。次第に演目を増やし芸術性を高
めたという。後に世阿弥、観阿弥父子が将軍足利義満に認められるほど大
成させた。
味方氏は、「能は『想像の芸術』で、無限の映像を広げるために想像力
を高めてご覧下さい」と、鑑賞方法に力を込めた。「『おもしろい』『つ
まらない』は、みなさんの感受性次第」とし、(つまらないと感じるの
は)「役者が悪いのではないですから」と断って会場の笑いを誘い上演
へ。観客は、約660年の伝統を誇る日本最古の舞台芸術の奥深さを実感
したようだった。
観客のマイケル・フリッツエンさんはウエストバレーから1人で見に来
た。サンタモニカの禅センターに通う日本文化の愛好者。日本で歌舞伎に
魅せられ、日本文化の舞台演劇に興味を持つ切っ掛けとなった。一昨年の
日米劇場での文楽公演に参加し、昨年また日本で文楽を鑑賞した。能は今
回が初めてで、「動きがすごく遅い所作は、1つひとつに意味のあるも
の」と悟ったという。「禅に通じるものがあり、瞑想でき感銘を受けた」
と独自の発想で鑑賞、味方氏のレクチャーのアドバイスを忠実に守ったこ
とで、新たな境地を開いたという。「残念だったのは、少し公演時間が短
かったこと。次は長い舞台が見たい」と希望した。
ドーシー・リンジさんは、アルタディナにある私立パサデナ・ウォルド
ルフ・スクールの教師。参加は同僚の小柳裕美さんの勧めによるもので、
1年生から8年生までを教える他の教師陣とともに鑑賞した。ドーシーさ
んは「能の所作は西洋の演劇と比べ速さに大きな違いがある」と指摘。
「太鼓と笛の演奏、『よー』などの掛け声はパワフルだが、その半面遅い
役者の動きに引き込まれ瞑想に耽った」と役者と囃子を対比しながら楽し
んだという。ただ、エンディングがあっけなく感じたことを残念がった。
敦盛に成り切った味方氏。楽屋で面を外し安堵の表情を浮かべた。客の
反応が良く「本物の舞台芸術を見よう」という熱意が伝わってきたとい
う。「仏教の思想を理解してもらい、少年(敦盛)の美しさも分かっても
らえたと思う」と胸を張った。
味方氏ら一行は今回の米ツアーで、カリフォルニアとワシントン、コロ
ラドの3州5都市で上演した。
【永田潤、写真も】
|